残光


薄明かりが差し込む薄暗い部屋。畳の上に座り、己の腹を凝視する。冷たくなった刃が、まるで私の心を映し出すかのようだ。

刻々と迫る最期の時。生への執着と、死への恐怖がせめぎ合う。一瞬、故郷の風景が目に浮かぶ。幼少の頃、母親の膝の上で聞いた昔話が、今、頭の中に蘇る。

しかし、もはや過去を悔やむ暇はない。ただ、静かにこの世を去るのみ。散る桜のように、潔く散りたい。

窓の外には、満月が昇り始めた。月の光が、私の顔に当たる。この世に未練はない。ただ、少しだけ寂しい。

深呼吸をして、刃を腹に突き刺す。痛みよりも、安堵感が広がる。意識が遠のいていく中、私は静かに目を閉じる。


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