ほんとうは、
こんなに寂しくなるようには
つくっていなかった。
神様はそう言った。
人間をつくった日のことは、
もうあまり覚えていないらしい。
少しの好奇心と、
少しの退屈と、
あり余っていた時間。
それらを混ぜて、
土に息を吹きかけた。
ただ、それだけだったという。
死ぬことは決めていた。
永遠に生きるのは、
きっと退屈だと思ったから。
けれど、
死ぬことを知りながら
生きることが、
これほど苦しいとは
思わなかった。
恋も、
失敗だったかもしれない。
ひとりでは寂しいだろうと思って、
誰かを好きになる心を与えた。
なのに人間は、
会えない夜をつくり、
届かない言葉をつくり、
愛しているのに
別れるということまで覚えた。
涙について尋ねると、
神様は少し困った顔をした。
「あれは、
目に入ったゴミを流すためにつくったんだ」
それ以上は何も言わなかった。
戦争について尋ねた。
病気について尋ねた。
生まれた場所で人生が変わることや、
努力しても報われない人がいることや、
優しい人から先に傷ついてしまう理由を尋ねた。
神様は長いあいだ黙っていた。
やがて、
「自由を与えたから」
と言った。
たぶん、
言い訳だった。
だから最後に、
幸せについて尋ねてみた。
神様は窓の外を見た。
夕方の街を
自転車で帰っていく人がいた。
スーパーの袋を提げて
急いでいる人がいた。
古い家の窓に灯りがついて、
どこかから
夕飯の匂いがした。
「それは私がつくったものではない」
神様は言った。
「あなたたちが、
勝手につくったものだ」
そのとき初めて、
神様が少しだけ
うれしそうに見えた。


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