紫陽花の記憶


紫陽花の記憶

梅雨の季節、静かな雨が降り続く中、 庭の片隅に咲く紫陽花が、一際鮮やかに彩っている。 君と一緒に植えたあの日のことを、ふと思い出す。

「この花、雨が降るともっと綺麗になるんだよ。」 君が微笑みながら言った言葉が、 今でも耳に残っている。

雨粒が葉を伝い、花びらにしとどに落ちる。 その一瞬一瞬が、君との思い出を映し出す鏡のようだ。 青や紫、時には淡いピンクの花が、 心の中で揺れている。

僕たちは庭で、傘をさして並んで立っていた。 君の手を握りしめると、その温かさが伝わってきて、 雨の冷たさを忘れさせてくれた。

「この紫陽花、来年も咲くかな?」 君が問いかけた時、僕は頷いて、 「きっと咲くよ」と答えた。 その約束が、今でも胸に響いている。

季節が巡り、君は遠い場所へと旅立ったけれど、 紫陽花は毎年、変わらずに咲き続けている。 その花を見るたびに、君との約束を思い出し、 少しだけ心が温かくなる。

紫陽花の記憶は、雨と共に蘇り、 君との時間を再び感じさせてくれる。 この庭で咲き誇る花々が、 僕たちの絆を永遠に繋ぎ止めてくれるように。


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