家に帰るとお爺は傷だらけであった。
だけどお婆は驚かなかった。
お爺は痴呆症が進んでおり芝刈りといってももう最早芝刈りの程を成していなかった。
だから傷だらけで帰ってくることも多かったが、もうそんなことにお婆は驚かないのであった。
お婆「今日は川で桃さ拾った、あとで捌いて食うから楽しみにしてろ」
お爺「ありがてえことだ」
お婆は台所まで行き桃を茶色の台にのせ、ゆっくりと鉈を振りかぶった。
するとどうだろう。
桃の外郭から眩いばかりの虹色の光がさし始めた。
お婆さんは恐ろしくなってお爺と目を合わせた。
お爺は目を瞑り微動だにしなかった。
光は強くなりお婆とお爺の身体を包み込んだ。
お婆「こ、これは・・・・・」
桃はゆっくりと頭頂部から裂け目が入り割れ
その割れ目からは更に眩い光が放たれた。
お婆とお爺の視界は眩い光の中に溶けていき
二人の視界は真っ白になった。
お爺「し、死んだのか?・・・」
お爺が声をあげる。
その眩い光の生命エネルギーに触れ
お爺は認知機能をぐんぐんと取り戻した。
お婆はお爺の目の中に輝きが戻っていくのを見た。
そうしてしばらくの後、眩い光は徐々に霧散し世界は再び普段の色を取り戻していった。
そして桃の中には小さな赤ん坊が鎮座していた。
彼らはその男児を 桃太郎 と名付けた。